こんにちは。
オペラあらすじ入門ガイドの管理人、リサです。
今日はドニゼッティ作曲のオペラ「ルクレツィア・ボルジア」の
あらすじ、ストーリー、登場人物、アリア等を
ざっくり&じっくり解説していこうと思います。
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ドニゼッティ作曲、オペラ「ルクレツィア・ボルジア」の基礎知識
【原題】
Lucrezia Borgia
【作曲者】
ガエターノ・ドニゼッティ
【台本】
フェリーチェ・ロマーニ
【初演】
1833年12月26日 ミラノ スカラ座
【上演時間】
約2時間
【登場人物】
ルクレツィア・ボルジア(S) 教皇の娘でフェッラーラ公爵夫人
ジェンナーロ(T) ヴェネツィアの貴族で軍人
アルフォンソ・デステ(Bs) フェッラーラ公爵
マッフィオ・オルシーニ(C)※ ジェンナーロの親友でヴェネツィアの高官
ルスティゲッロ(T) アルフォンソの家臣
グベッタ(Bs) ルクレツィアの家臣
※オルシーニ役はカウンターテナーが指示されているが、メゾソプラノ、アルトで上演されることが多い
【設定】
16世紀のヴェネツィア、フェッラーラ
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ざっくり版 あらすじ、ストーリー
ヴェネツィア大使一行がフェッラーラへの出発前のパーティで景気づけをしながら、フェッラーラ公爵・アルフォンソの妻のルクレツィア・ボルジアの非情さに悪口を言い合う。
一人寝入ってしまったジェンナーロのもとに仮面をつけたルクレツィアが現れる。
ルクレツィアの顔を知らないジェンナーロは彼女を口説こうとし、自分の生い立ちが分からないと告白する。
戻ってきたジェンナーロの仲間にルクレツィアだと正体がばれ、非難されながらその場から立ち去るルクレツィア。
だがルクレツィアこそが、ジェンナーロの母親だったのだ。
アルフォンソはジェンナーロが妻ルクレツィアの愛人だと思い込み、ジェンナーロを殺すように家臣に命令する。
ルクレツィアとの事をからかわれたジェンナーロは怒ってアルフォンソ公爵の宮殿の紋章にいたずらをしてしまい、アルフォンソの家臣に捕らえられる。
そこに紋章にいたずらをした犯人がジェンナーロだと知ったルクレツィアは、彼を助けようと夫のアルフォンソと二人になって許しを請う。
だがアルフォンソはかたくなに彼を殺そうとし、毒殺することになる。
ジェンナーロに毒入りのワインを飲むようにすすめ、立ち去るアルフォンソ。
残ったルクレツィアは毒入りだとジェンナーロに告げ、解毒剤を渡して彼を逃がす。
公爵の家臣に生きていることがばれ、すぐに逃げようと準備をするジェンナーロ。
だが公爵の娘のパーティに行こうと仲間に誘われ、断りきれずに宮殿に向かう。
その様子を見ていた公爵の家臣はパーティで捕らえることができると尾行を中断する。
パーティで喧嘩が始まったために、ジェンナーロとその仲間達と、ルクレツィアの家臣のグベッタ以外の参加者たちは逃げ帰ってしまう。
公爵の娘が皆に酒をすすめ、全員がそれを飲み干す。
そこへルクレツィアが現れ、「私を侮辱した罰だ。ワインに入った毒はすぐに効いてくる」と言い放つ。
だがそこにジェンナーロがいるとは思わず、驚いたルクレツィアは彼と二人きりになって「解毒剤を飲んでくれ」と懇願する。
「自分だけが助かる訳にはいかない」とかたくなに拒否し、ルクレツィアを殺そうとするジェンナーロに、「あなたにもボルジア家の血が流れている。あなたの母親は私です」と真実を告げる。
驚くジェンナーロだが、毒がまわって息をひきとる。
叫び声を聞いてかけつけたアルフォンソ公爵たちにジェンナーロが自分の息子だと告白し、ルクレツィアは倒れてしまうのだった。
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じっくり版 あらすじ、ストーリー
※あらすじ内に出てくる数字をクリックすると、その場面で歌われるアリアのタイトルに飛びます。
【プロローグ】
16世紀初頭のヴェネツィア。
翌日からフェッラーラに赴く大使一行が出発前の景気づけにパーティをしている。
皆は、フェッラーラの公爵夫人であるルクレツィア・ボルジアのこれまでの悪行を噂している。
オルシーニが、リミニでの戦いでジェンナーロが自分を救ってくれ、二人は固い友情で結ばれた話を披露する(※1)。
ボルジア家に家族を殺されたオルシーニたちは、ルクレツィアとボルジア家の悪口を並べたてるが、ジェンナーロは興味がない。
一人居眠りをしたジェンナーロを残し、仲間たちは立ち去る。
そこへ仮面をつけたルクレツィアがやってきて、ジェンナーロの寝顔を愛しそうに見つめる(※2)。
だが、ルクレツィアの夫であるアルフォンソ公爵とその家臣のルスティゲッロがその様子を覗き見している。
アルフォンソ公爵はジェンナーロがルクレツィアの愛人だと疑っているのだ。
ジェンナーロは目を覚まし、目の前にいる美しい婦人に心を奪われる(※3)。
そしてルクレツィアに、自分はどこの生まれか誰が両親かも知らないこと、実の母親から手紙が届き「とある事情であなたを手放した。母親探しは決してしないように」と書かれていたことなどを告白する。
実は目の前にいるルクレツィアがジェンナーロの母親なのだが、彼はそんな事とは夢にも思っていない。
オルシーニ達が戻ってきて、そこにいるのがルクレツィアだと気づき、非難の言葉を口々に叫ぶ。
つけていた仮面を剥ぎ取られたルクレツィアはその場から逃げ出す(※4)。
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【第一幕】
フェッラーラでジェンナーロが滞在している邸宅の前。
ジェンナーロを妻の愛人だと勘違いしているアルフォンソ公爵は、彼を殺すように家臣のルスティゲッロに命ずる。
オルシーニ達が騒ぎながら出てくるが、ジェンナーロだけは物静かで、パーティに行こうという誘いにも興味を示さない。
「ルクレツィアに惚れたのか」とからかわれたジェンナーロは怒り、ボルジア家への怒りを見せるために「BORGIA(ボルジア)」の紋章から「B」の文字を切り取って、「ORGIA(バカ騒ぎ)」にして家名を侮辱する。
その後一人で館に入ったジェンナーロはアルフォンソ公爵の家臣に捕らえられる。
アルフォンソ公爵がルスティゲッロにジェンナーロを毒殺するように命じているところへルクレツィアが現れる。
ルクレツィアは切り取られた紋章を発見し、「ボルジアが侮辱された。犯人に復讐を」と訴える。
アルフォンソが「すでに犯人は捕まえた」とジェンナーロを連れてこさせ、それが息子であることにルクレツィアは驚く。
ルクレツィアは息子を助けようとかばおうとするが、ジェンナーロは罪を認めて開き直る(※5)。
夫と二人きりになりたいと頼み、ルクレツィアはアルフォンソに「彼を許してほしい」と懇願する(※6)。
だが愛人を助けようとしていると思い込んでいるアルフォンソは彼を絶対に殺すと告げ、「せめて剣で刺すか、毒殺するかは選ばせてやろう」とルクレツィアに選ばせる。
仕方なく毒殺を選ぶルクレツィア。
ジェンナーロが連れてこられ、アルフォンソは彼を許すふりをして毒入りのワインを飲ませる。
ルクレツィアに「二人きりで別れを惜しむがいい」と言ってその場から去っていく。
ルクレツィアはジェンナーロに飲んだのは毒入りワインだと打ち明けて解毒剤を渡し、「フェッラーラから逃げなさい」と忠告する。
ジェンナーロはルクレツィアを信じていいものかためらうが、最終的には解毒剤を飲み、教えられた裏口から逃げていく(※7)。
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【第二幕】
ジェンナーロが滞在している部屋の前。
ルスティゲッロと殺し屋が、ジェンナーロを殺そうと隠れて様子を伺っている。
オルシーニがジェンナーロの部屋へやってきて、公爵の娘のパーティに出ようと誘う。
ジェンナーロは命を狙われていることを話すが、オルシーニは「ルクレツィアに騙されたんだよ」と信じようとしない。
オルシーニは「パーティの翌朝に一緒に出発しよう。僕たちは固い友情で結ばれたはずなのに、僕を置いていくのか」と聞き入れないため、ジェンナーロは仕方なく一緒にパーティに行くことにする(※8)。
ルスティゲッロはその様子を見て、「向こうから罠にかかりにやってくる」とジェンナーロを尾行することをやめる。
パーティ会場では皆が楽しく騒いでいる。
ルクレツィアはボルジア家を馬鹿にした若者たちに復讐しようと家臣のグベッタに命じて喧嘩を起こし、オルシーニ達以外の女性を帰らせる。
公爵の娘が皆に酒をすすめ、皆がそれを飲むが、グベッタが酒を飲まないことを不審に思いオルシーニにそれを告げるジェンナーロ。
だがオルシーニは考えすぎだと笑い飛ばし、乾杯の歌を歌い上げる(※9)。
どこからともなく鐘の音と祈りの声が聞こえ、突然部屋が暗くなる。
オルシーニ達は驚いて部屋から出ようとするが閉じ込められて出られない。
そこへルクレツィアが現れ、「お前たちがいるのはルクレツィア・ボルジアの前だ。お前たち5人はボルジア家の名前を汚した。お前達が飲んだ毒はもうすぐ効いてくる」と言い放つ(※10)。
そこへジェンナーロが「5人ではない。6人だ」と言いながら姿を見せて自らワインを飲み干す。
すでにヴェネツィアに帰っていたと思っていたジェンナーロがいたことにルクレツィアは動揺する。
ルクレツィアはオルシーニ達5人を別室へ連れて行かせ、ジェンナーロと二人になってから「なぜここにいるのか」と問いかける。
ジェンナーロは「前にあなたにもらった解毒剤は一人分しかない。仲間を助けられないなら自分も一緒に死ぬ」と言い、ルクレツィアを殺そうと剣を手にする(※11)。
ルクレツィアは「あなたにもボルジアの血が流れている。お願いだから解毒剤を飲んで」と必死に説得しようとし、ついに「あなたの母親は目の前にいる」と自分が母親だと告白する。
驚くジェンナーロだが、その体に早くも毒がまわり、ルクレツィアは助けを呼ぼうと叫び声をあげる。
だがジェンナーロは母親の腕の中で息絶える(※12)。
ルクレツィアが悲しみにくれていると公爵たちがやってきて、ジェンナーロはどこにいるのかと訪ねる。
ルクレツィアは「ここにいます。彼は私の息子でした。」と告白し、正気を保てずに倒れてしまう(※13)。
【補足】
1840年の改訂版では、ジェンナーロが死ぬ直前に母に別れを告げ(※14)息絶えてから、ルクレツィアが悲しみのあまりジェンナーロの上に倒れてしまう、というストーリーになる。
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オペラ「ルクレツィア・ボルジア」のアリア&聴きどころ
※数字部分をクリックするとあらすじ内のアリアが歌われる場面に飛びます。
※1オルシーニのアリア
あの忘れがたいリミニの戦いで Nella fatal di Rimini e memorabil guerra
※2ルクレツィアのアリア
なんて美しいのでしょう Come e’ bello
※3ルクレツィアとジェンナーロの二重唱
優雅で美しいお方 Leggiadra, amabil siete
※4オルシーニ、ジェンナーロ達の六重唱
我が名はマッフィオ・オルシーニ Maffio Orsini, Signora, son io
※5アルフォンソ、ルクレツィア、ジェンナーロの三重唱
フェッラーラであなたの妻が侮辱されました Avvi in Ferrara chi della vostra sposa
※6アルフォンソとルクレツィアの二重唱
我々二人だけだ Soli noi siamo
※7ルクレツィアとジェンナーロの二重唱
何ということ!お前が飲んだのは毒なのです Infelice! Il veleno bevesti
※8オルシーニとジェンナーロの二重唱
僕らはいつも一緒だ Ah mio Gennnaro! Caro Orsinno! sempre insieme
※9オルシーニのアリア
幸せになる秘訣は(乾杯の歌) Il segreto per esser fellici
※10ルクレツィアのアリア
ルクレツィア・ボルジアの前である Presso Lucrezia Borgia
※11ルクレツィアとジェンナーロの二重唱
お前がなぜここに Tu pur qui?
※12ルクレツィアのアリア
聞いてちょうだい M’odi, m’odi
※13ルクレツィアのカバレッタ
彼は私の息子でした Era desso il figlio mio
※14ジェンナーロのアリア
お母さん、離れていても Madre, se ognor lontano
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オペラ「ルクレツィア・ボルジア」についての私的解説
実在した人物、ルクレツィア・ボルジアの半生を描いたオペラです。
オペラの中ではルクレツィアが極悪非道な女性となっており、歴史上の研究でもそのような説があるそうですが、真実ははっきり分かっていないようです。
ですが、ルクレツィアの兄や父親はルクレツィアを政治的に利用したという話は事実なようで、彼らの方が責められるべき人物だと言われています。
さらに、作曲者のドニゼッティ本人が後にラストシーンを書き換えていることで、ルクレツィアやジェンナーロがどういう人物だったかの創作や表現は何通りにも変わってきます。
これは、最初にルクレツィアを演じたプリマドンナのメリク=ラランドが自分が目立つようにフィナーレの部分を書き換えるようにドニゼッティに依頼したためだそう。
ドニゼッティは一旦は書き換えたものの後で考えを改め、派手なルクレツィアのカバレッタ(
※14)をなくし、自分で思い描いていたフィナーレに手直しをしたそうです。
現在ではジェンナーロの最後のアリアとルクレツィアのカバレッタ両方が入ったバージョンで上演される事が多いとか。
最後のこの二つの曲はどちらも大曲で、きちんと歌いきれる歌手を二人揃えることからして大変です。
場合によっては改訂前、改訂後のどちらかのバージョンでどちらか一人にスポットが当たるようにして上演することもあるようです。
改訂前、改定後、そしてそれぞれの人物像をどのようにとらえて表現するかによって、上演ごとにまったく違うオペラになると言えます。
ドニゼッティのベルカント音楽にどっぷり浸かりながら、様々なバージョンを比べて楽しむのもオツかもしれません^^
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以上、
「オペラ「ルクレツィア・ボルジア」のあらすじ、ストーリー、登場人物、アリア等を解説。【ドニゼッティ作曲】」
でした。
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