こちらのページでは、管理人の考えるベルカント唱法のやり方、歌い方を解説しています。
ベルカント唱法を独学で学びたい方、勉強中だけどうまくいかずに迷っているという方へのヒントになれば幸いです。
※当ページは随時更新中です。
※当ページの内容は管理人の経験に基づく個人的主観・感覚によって書いております。この内容をもとに実践され万が一、何らかの不都合や損害が発生したとしても、当サイト及び管理人では責任を負いかねますのでご了承ください。
※当サイトをご覧になった方からの発声法や音楽のレッスンのご要望は受け付けておりません。
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【はじめに】管理人と恩師の情報
プロフィールでも書きましたが、管理人の歌スペックをもう一度軽くご紹介しておきます。
某音楽大学の声楽科卒、軽めのコロラトゥーラ系ソプラノ。
イタリア留学などで修業を積みつつ、コンサートに出演するなど音楽活動を行っています。
長く師事していた恩師の影響でベルカント唱法に傾倒し、恩師の教えをもとにより自由に歌うためのベルカント唱法を現在も独自に研究中。
レパートリーはイタリアオペラ中心に、フランスやドイツものの軽めのもの、たまに歌曲などもやっています。
そして、私が非常にお世話になった恩師(女性)はこんな方です。
日本の某音楽大学卒業。
イタリアに渡り、10年もの間イタリアで偉大なるイタリアオペラの黄金時代を知っている音楽家たちに師事し、ベルカント唱法を研究。
複数の国際声楽コンクールでの入賞、イタリア、フランス、日本で多くのコンサートに出演、リサイタルも開催。
その後日本に帰国し、独自で構築したベルカント唱法のメソッドを日本で広めていく活動を始められました。
私はこの先生に出会って、世界が大きく変わりました。
恩師のベルカント唱法メソッドが私を救ってくれた
なんとか音楽大学の声楽科に入れたものの、声は細くて不安定だし、まともに一曲歌いきれないし、つねに歌う時に自分ががんじがらめな、不自由さを感じながら歌っていました。
いつも自分の歌に自信がなくて、上手くなりたくて頑張っているけど、それが毎回裏目に出る。
そんな非音楽的だった私に、わかりやすくベルカントの歌い方を教えてくださったのが恩師です。
恩師のメソッドは日本の中ではかなり独特なアプローチですが、非常に理にかなっています。
このページでは、私が恩師から教わったベルカント唱法のやり方、そして私が恩師の教えをもとに試行錯誤してわかってきた事をもとに書いています。
日本で伝えられている一般的なやり方とはかなり異なる考え方であること、そして管理人の主観と感覚も交えてお伝えしていることを、まずはじめにご了承いただければと思います。
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ベルカント唱法とは
「ベルカント唱法とはどんな歌い方か?」というのはさまざまな考え方があり、定義も数多くあります。
なのでここでは細かい事はおいといて、私がざっくりととらえている
- イタリアで生まれた歌唱法
- 人間の持つ声の可能性を最大限に引き出す
- その人の個性を最大限に引き出す
- 不自由さがなく、自由に喋ったり表現しながら歌える
このような、素晴らしい歌い方だということぐらいを知っておいて頂ければ充分かと。
ベルカント唱法は、その人の声が持っている可能性を最大限まで引き出すので、どんな身体でもどんな声の人でも、その人らしさがわかる、魅力的な歌が歌えるようになります。
オペラ界のディーヴァ、マリア・カラスも「悪声」と言われるほどの個性的な声でしたが、ベルカント唱法で歌うことにより、ドラマティックな表現力を溢れさせて今なお多くのオペラファンを魅了しています。
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ベルカント唱法のやり方・歌い方の基本編【独学の方にも】
ではここから、ベルカント唱法のやり方・歌い方を解説していきます。
先ほども書きましたが、私の恩師の独自メソッドと弟子の管理人の主観&感覚である事をご了承ください。
※こちらでお伝えする内容は、ご自身の声に合った声種を正しく選んでいるという前提で書いております。
もしご自身の声に合っていない声種・レパートリーで歌われている場合、このメソッドの効果は100%発揮できない可能性もあるのでご注意ください。
ご自身の声種が分からないという方は、とりあえず軽い声種(女性→ソプラノ・リリコ・レッジェーロ、男性→テノーレ・レッジェーロ)のレパートリーをやっていれば声を傷める危険性は低くなります。
ちなみに、日本人はその体形・骨格からかなりの割合で女性はソプラノ・リリコ・レッジェーロ、男性はテノーレ・レッジェーロであると言われています。
喋るように歌えばベルカント唱法になる
ベルカント唱法で目指す究極のところは、
喋るように歌う。
これだけ。
これさえできればベルカント唱法マスターです!
「は?それだけ?」と思われるかもしれませんが、冗談ではなく大真面目に言ってます。
声楽の発声法を習う際、「喋るように歌って!」と言われた経験があるかもしれません。
それは「もっと自由に!」「脱力して!」などの別の意味で言われている可能性もあります。
ですが、真のベルカント唱法の究極のところは
喋るのと全く同じように歌う。
これなんです。
「全く同じ」というのが非常に重要なポイント。
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100%喋っているのと同じやり方で声を出す
「喋るみたいに」とか、「喋ってるつもりで」とか、ものの例えではないんです。
100%(むしろ200%の気持ちで)、喋っているのと全く同じように声を出すんです!
「喋っているのと全く同じ」とは、
- その音程で喋る時と同じテンションで
- そのテンションで喋るのと同じ声の位置(ポジション)で
- そのテンションで喋るのと同じ自由なノドで
声を出す、ということを指しています。
その音程で喋る時と同じテンションで言う!
「その音程で喋る時と同じテンションで声を出す」という事について少し解説します。
「歌を歌う」ということを意識しすぎると、どうしても綺麗な声や大きな声を作ろうとしてしまいがちですが、ベルカント唱法の理想は「喋るのと同じに」ですから、自分が普段出さないような声の出し方をするのはNGです。
「音程で喋る」と書くとわかりにくいかもしれませんが、私たちは普段、かなり広い音域を使って喋っています。
- 気持ちが暗い時は低い声
- 冷静に喋る時は中音域
- 楽しく、ハイテンションで喋っている時は高めの声
- 驚いた時などは悲鳴に近い声
こんな風に、喋るテンションによって使う音域もさまざまです。
偉大なる作曲家は歌い手の声についても精通していますから、表現して欲しいセリフ(歌詞)は「その表現のテンションに合った音程」で書かれています。
例を挙げると、
「彼と結ばれて幸せ!」という歌詞なら、普段のあなたが「彼と結ばれて幸せ!」というテンションでそのセリフを言う、その音程になっているはず。
「私の普段のテンションとは違うんだけど!」という場合は、表現が足りない(俳優になったつもりでセリフを言いましょう!)か、本来のあなたの声種とは違うレパートリーを選んでいる可能性があります。
という訳で、そのテンションで喋る、そのテンションのままで声を出せばいい、という事ですね。
単純に声を出してその音程を言えたとしても、そのテンションで言っていない場合はポジションの位置がイマイチなので歌うのに不自由になるはず。
なので、そのテンションのままでセリフ(歌詞)を喋る、という事は非常に重要なんです!
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ベルカント唱法のやり方・歌い方の訓練編【歌う筋肉を育てよう】
ここでおさらいしておきましょう。
ベルカント唱法で一番重要なのは「喋っているのと全く同じように声を出す」ということでしたね。
「喋っているのと全く同じように」というのは、
- その音程で喋る時と同じテンションで
- そのテンションで喋るのと同じ声の位置(ポジション)で
- そのテンション喋るのと同じ自由なノドで
声を出す、ということでした。
ベルカント唱法のやり方には歌う筋肉が必要
こうして文章で見るとシンプルに感じますが、実際にこの3つのポイントを意識して声を出そうとすると、最初は
「この状態から歌うなんてできない!」
と思うかもしれません。
その状態で歌声を出そうとしても、出ない感じに思えてしまうんですよね。
いくら「喋るのと100%同じように」と言われても、ただ喋るだけと歌うのはもちろん違う行為です。
ですから、100%喋るのと同じ身体の状態では歌うことはできません。
身体まで100%同じにしていたら、ただ喋るだけになってしまいますからね。
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身体の筋肉を育てて支えを作る
ここで出番となるのが身体の筋肉。
体を支えて声だけを自由に出せるようにするために、背中、お腹、腰、お尻、脚の筋肉に頑張ってもらうのです(ノド周辺や顔の筋肉は頑張る必要はなく、自由に)。
頑張ってもらうと言っても、そこに力を入れてわざと頑張らせるのではなく、喋るのと全く同じテンション・ポジション・ノドの状態で歌う感覚をまずは最優先します。
そうやって喋るのと同じように声を出そうとすることで、自然と身体の筋肉が頑張ってくれるようになります。
最初のうちはその筋肉が育っていないので、「喋るのと全く同じじゃ歌えない!」と思うかもしれませんが、喋るのと全く同じテンション・ポジション・ノドの状態だけで言う事を最優先して声を出し続けていれば、その筋肉はだんだん育ってきます。
なのでとにかく、喋るのと全く同じテンション・ポジション・ノドの状態の喋り方で声を出すことを常に最優先していくことが、ベルカント唱法を歌える身体を育てる近道なんです。
(「声を出す」という書き方をしていますが、「そのテンションで言う」という感覚の方が近いです。「歌う」という感覚にとらわれすぎていると言いづらくなります。)
ベルカント唱法に必要な体を根気よく育てる
ここまでに書いたことをやろうとすると、最初のうちはまともに歌えないし、音程もとれなくなるかもしれません。
いったん歌い方がリセットされた訳ですから、歌がヘタになった感覚におちいると思いますが、自由に歌うための筋肉を育てている最中なので気にせず「普段のあなた」のままで喋り続けてください。
根気強く自分の普段の喋り方(喋るのと全く同じテンション・ポジション・ノドの状態)を常に最優先し続けることで、ベルカント唱法が使える身体が徐々にできあがってきます。
ベルカント唱法のやり方を上達させるために避けるべきなのは、喋るのと全く同じテンション・ポジション・ノドの状態では歌えないからと言って、違う声を作ってとりあえず歌ってしまうこと。
そうすると一見声は出ますし音程も作れますが、支えとなる筋肉がなく、ノドまわりの部分に負担をかけることになりますから、ノドに良くないし歌うのも不自由だし、悪い歌いグセがついてしまいます。
なのでできる限り、喋るのと全く同じテンション・ポジション・ノドの状態で言うことを心がけましょう。
「人前で歌うからヘタに思われたくない」「または音程が作れなくてヘタな感じが辛い」というのであれば、筋肉が育っていなくても歌える、使われている音域の狭い曲を選ぶといいかもしれません。
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管理人がベルカント唱法のやり方に気づくまでの道のり
わたくし管理人も、まだまだ修行中ですが、いちおう「ベルカント唱法ってこんな感じかも」とうっすら感じるところまでは来ています。
それ以前は自分なりに頑張っていたつもりでしたが、やってもやっても全然うまくいかず、逆に不自由になり、歌っている最中は常にがんじがらめになっているような歌い方をしていました。
それが、先ほどからお伝えしている恩師のメソッドである「喋っているのとまったく同じように声を出す」という事だけを追求し、
- その音程で喋る時と同じテンションで
- そのテンションで喋るのと同じ声の位置(ポジション)で
- そのテンション喋るのと同じ自由なノドで
という事を心がけていたら、だんだんとベルカント唱法らしい、自由度が高い歌い方ができるようになってきました。
ここでは独学中の方や、ベルカント唱法のやり方について悩んでいる方の参考に少しでもなるように、わたくし管理人のこれまでやってきた歌い方の遍歴をご紹介していきたいと思います。
小学生・中学生時代:100%ノドで押していた
私が歌を始めたのは小学生の頃。
合唱に力を入れていた担任の先生が大好きで、その先生に褒められたい一心で大きな声を出そうとノドで押しまくって歌っていました。
中学に上がってからも合唱を続けたくて合唱部に入部。
そこでも完全にノドまかせで、どれだけ大きな声を出せるかが重要でした。
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高校時代:ノドで押しながら声楽をするのに混乱
歌で音大に行こうと決め、声楽のレッスンをスタート。
メゾソプラノの先生についたものの、ノドで押す習慣から脱却できず、先生もどうすればいいかわからなかったようで、問題児扱いされてました。
それでもレッスンを続け、なんとか音大に入学できました。
音大時代:得意な音域だけでごまかしていた
音大に入ってからも結局ノドで押すやり方は変えられず。
ついた先生はバリトンだったため、高めの私の声の扱いに困っていたようでした。
もともと高めなので上の方が出しやすく、五線内では声がひっくり返りまくっていました。
声を出そうとしてもすぐにまともな声は出ないし、音程はフラフラするし、息はすぐなくなるしで、いつ変な声が出るか、綱渡り状態で歌っていました。
声が変になってしまうのが怖くて、常に声を前に出そうと押しまくってましたね。
(今思えば、押していたから変な声だったのに…)
なので一曲を歌い切るために、比較的安定する音域の、できるだけ高めの音域の曲ばかり選んでいました。
先生も高いソプラノの曲はあまり知らないので、かなり放任で勝手に歌っていました。
音大卒業後:「ノドで押していた」ことを自覚する
音大を卒業した後、演奏家になる度胸もスキルもなかった私は、普通に働き始めました。
ですが、下手なりに歌うことは好きだったため、大学時代の先輩が紹介してくれた、良さそうな先生のところに通い始めました。
その先生はソプラノで軽い声なので、私とほぼ同じレパートリー。
学生時代は歌わせてもらえなかった高い音域のアリアなどもどんどんやらせてくれて、自分の声の可能性が広がっていくようで、すごく楽しかったです。
ですが、この頃もまだまだノドで押していました。
その先生もベルカント唱法を研究している方だったため、自由に歌うためのヒントをたくさん下さいました。
この先生についてはじめて、自分がいかにノドで押していたか、と自覚することができました。
とはいえ、自覚してもすぐには直らず…。
基本的な体の使い方や考え方を教えて頂きながら、レパートリーを増やしていきました。
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恩師との出会い:私の歌人生を変えるベルカント唱法メソッドに触れる
その後いろいろあり、先ほどからご紹介しているベルカント唱法の独自メソッドを確立した恩師の先生(女性)につくことになりました。
恩師には数えきれないぐらい沢山のことを教えて頂きましたが、「どうやったらいい声を出せるか」という考えで頭が凝り固まっていた私は、まだまだノドで押していました。
「声を作るにはノドをコントロールしなければいけない」という考えに支配されていたんです。
(もちろん、声を出すには声帯をきちんと使う必要があります。ですが、声帯を自分でコントロールしようとすると、不自然になってしまいがちなので注意が必要です)
そんな、不自然なことばかりして悩んでいた私に、恩師は繰り返し言ってくれました。
「声を作るんじゃない。まず音楽を作って。」
「いい声で歌おうとしないで。どういう風に言うかが大事だから。」
「どういう音楽かを先に考えて。声はそれについてくるから。」
今思えば、本当にこの通りで、人に教えるにはこういう風に言うしかない事も分かるのですが、当時の私はこれが全然わかっていませんでした。
「それはいい声を出せる先生だから、そういう風に思うんだ。まずいい声を作らないといい音楽だって作れない。」
そう思っていたんです。
ですが、それは完全に間違っていました。
恩師が繰り返し言ってくれた言葉が、真実だったんです。
恩師の言葉はこれ以上ないくらい歌の本質をとらえていて、わかりやすい言葉だったと今ならわかります。
演奏家として活動開始:不自由さに苦しめられる
しばらくのあいだ恩師のレッスンに通っていた私は、粘り強い恩師のおかげで亀の歩みのように少しずつできる事が増えていきました。
恩師のすすめもあり、いくつかのオーディションやコンクールに挑戦し、入賞などの結果を残しつつ、コンサートに出演できるようになりました。
ですが「自分で声を作らないとダメ」という考えに支配されていた私は、そうなっても歌っているときの不自由さに苦しめられていました。
相変わらず中低音域はものすごく苦手で、声がひっくり返ることもしょっちゅう。
本番で歌っている間は常に「無事に歌いきれますように」と祈り、冷や汗をかきながら歌っていました。
そんな私も恩師のレッスンの時には理想に近い声が出せることもありました。
今思えば恩師は色んな手を使って、歌う時のポジションを最良のところにはめてくれていたんだと思います。
だからこそ、恩師のレッスンの時と自分一人で歌っている時の差が激しく、「先生がいないとダメだ」という気持ちが強くなっていきました。
ちなみに、イタリアに留学したのもこの時期。
恩師から離れるとノドで押して歌っていた私は、本場イタリアの学校で教わっても、全然上達しませんでした。
イタリアで教えてくれた先生たちも、どうすればいいか困っていたようです。
そう考えると、恩師がどれだけすごいかがわかります…。
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一人で修業開始:まずポジション探しから
長いあいだ恩師にお世話になりましたが、色々あり独り立ちすることに。
恩師に教わったことを無駄にしないためにも、一人である程度歌えるようになりたいと修行をスタートさせました。
とはいえ一人になって最初の2年ぐらいは、一人でやる勝手がわからず、昔のノドで押す歌いグセばかりが出て、何度も挫折しそうになりました。
恩師に教わったことを忠実に実行していたつもりが、一番大事な部分である「喋るのと全く同じように」ということが中途半端で、できていなかったんです。
この基本中の基本ができていなければ、他の教えを再現しようとしてもできないのは当然。
恩師に教わっていた時の雰囲気だけを再現しようとしていた私は、相変わらず不自由に、がんじがらめな歌い方をして一人で苦しんでいました。
ですが「一人では何もできない」と思いたくなかった私は、何度も恩師の教えを思い出し、その言葉通りに忠実にやることをひたすら繰り返しました。
「そのテンションで喋るのと全く同じように」ということが特にできていないと自分で感じていたので、その音程のテンションで喋るのと全く同じポジションで歌い始める、ということを特にこころがけました。
この頃はとにかく、喋る感覚と歌う感覚を近づけるために、その音程でまず喋ってから、同じポジションとやり方で歌う、という事を繰り返していました。
苦しみの中で光を見つける:自由さがわかってくる
一人で恩師のやり方を繰り返しながら3年が経過。
恩師の言葉を思い出し、フレーズごとにその言葉に忠実にやっていく。
そんな練習をしていたら、じわじわと恩師とやっていた頃の感覚が戻ってきました。
それでもまだまだ不自由さを感じまくっていた私。
あるコンサートに出演するために、久しぶりに大きなアリアを練習していましたが、不自由な状態では歌いきれず、不安と焦りの中で練習を続けていました。
上手くいかない時に毎回必ず思い出すのは恩師の言葉。
「そのテンションで言う言い方だけで、あとは何もしなくていいの。」
「そのテンションで言うのと同じぐらい、簡単に歌えるものよ。」
特に不自由さを感じていたこの頃に思い出していたのはこれらの言葉でした。
「言うのと同じように簡単に歌えるなんて、そんなことあり得ないでしょ!」
少し前の私だったら、そう思っていたでしょう。
ですが、本番も近くなり崖っぷちに立たされた私は、恩師の言葉にすがるしかありませんでした。
先生の言葉は常に本当だった。
だから、今回も先生の言葉通りに忠実にやってみよう。
そう思い、とにかく「簡単に歌う」ことを意識して練習を続けました。
Youtubeなどで大歌手が歌う姿を見ていると、皆いとも簡単そうに歌っていますよね。
そういう姿を日々見ていたこともあって、恩師の言葉に説得力を感じるようになっていました。
この時は「何としても本番を成功させたい」という気持ちから、恩師の言葉だけを頼りに、「簡単に、喋るのと同じようにやる」という事をひたすら毎日身体に染みこませるようにしました。
すると、他に策がない崖っぷちの状態だったからこそ、強制的に恩師の言葉を受け入れるしかなく、じょじょに恩師のメソッドの理想の歌い方に近づいてきたんです。
つまり、だんだんと不自由さが減って、思った通りに歌えるようになってきたのです(あくまで当社比です)。
この時の本番前の時期は、大げさに言えば「覚醒」したような感覚がありました。
本番前に自由な歌い方に覚醒した時の記録(備忘録)
参考になるかわかりませんが、この時期の思考や感覚の移り変わりを記録として残しておきます。
そのテンションで言う位置(ポジション)で、もっと簡単に、喋るのと同じままに歌いたい
↓
曲の後半になるとノドが固まってきて苦しい、だから喋る時と同じ自由なノドでやりたい
↓
ノドが固まったままだと続けて歌えなくなるから、フレーズごとにノドを脱力させよう
↓
フレーズ終わりごとにノドを脱力(+フレーズ始まりにまた固める)させていたら何とか続けて歌えるようになったけど、いちいち脱力するアクションがなんか変…もっと普通に歌いたい
↓
脱力することばかりを意識していたら、そのテンションで言うポジションが崩れてきたので、ポジションは言うままの位置で死守しなおす
↓
言うままのポジションを死守したままで、フレーズの合間にノドを脱力させながらやり続けていたら、「そもそもノドが脱力したままでもフレーズが言えるのでは?」いう感覚になってきた
↓
その音程のテンションで言うポジションで言うのは崩さない(=背中や腰などはポジション維持のために勝手に動いてくれる)で、ノドだけを普通に喋るのと同じように自由に脱力させて言うだけでいい
↓
ポジションが自由に言えるところを保っていて、ノドも自由に言えるから楽に歌い続けられる!
…という感じです。
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個人的な感覚で参考になるか分かりませんが、「ノドでコントロールする」「ノドで声を作る」という感覚で上手くいかない方にはもしかしたらヒントになるかもしれません。
こうして書き出してみると、歌う時にノドを固めている(声帯ではなく声帯周辺に力が入っている状態)のがダメだったと一発で分かるのですが、当時は「これが歌う感覚・ノドを使っている感覚だ」と思い込んでいたんですよね…。
途中で「フレーズ終わりにいったんノドを脱力して休ませればいいのでは?」と思いついたのは良かったですが、そこからまたご丁寧にフレーズ言い始めでノドを固め直していたのが笑えます。
「ノドを使って歌う」という感覚を思いっきり間違えていたんですね。
で、フレーズごとのノドの脱力をこまめに練習していたら、フレーズの歌いだしに間に合わずに脱力したままのノドでフレーズを歌ったことがあったんです。
その時に「ん?なんかノドが自由なままで言えた気がしたぞ?」と一瞬感じたのですが、途中ポジションの維持ができていなかったので、その感覚はその時一回だけで終わりました。
その後、ポジションが崩れてきた感覚があったので、ポジションを死守しなおすことに。
そのポジションで脱力しつつ言っていたら、なんだか少し自由な感じになってきました。
そんな事を繰り返していたら、「は!このポジションならノドは常に脱力でも言えるんじゃない?」とはたと気づき、やってみたらビンゴ!
この時本番3日前。よく間に合った私!
おかげ様で本番はかなり良い出来(当社比)になり、久しぶりに楽しく、自由な感覚で歌うことができました。
その後も別の曲でこのやり方を試していますが、ちゃんとこのやり方で忠実にやれば歌いにくさは感じません。
背中や腰などの身体にはしっかり働いてもらうことになりますが、自分の言いたいこと、やりたい音楽をちゃんと表現できます。
この時の感覚や思考がこれだけ移り変わり、ある程度自由な感覚まで持ってこれたのは、
恩師のベルカント唱法のメソッドを信じて、そのやり方でできるように何度も繰り返したことで、必要な体の筋肉が育った
というのも大きかったと思っています。
そして、いまだに「絶対に心がけねば!」と思っているのは、やはり
その音程のテンションで喋るのと全く同じポジションで言う
という事。
いくらノドを自由にしても、身体が育っても、ポジションが少しでもブレていたら自由には歌えません。
なので、
どういう風にそれを言いたいか
をしっかりと自分の中に持って、
そのままそれを言う
というシンプルなことをこれからも追及していきたいと思います。
そうすれば、今よりもっともっと自由に、もっともっと楽しく歌えるはずですから。
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