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オペラ「シモン・ボッカネグラ」のあらすじ、ストーリー、登場人物、アリア等を解説。【ヴェルディ作曲】

こんにちは。
オペラあらすじ入門ガイドの管理人、リサです。

今日はヴェルディ作曲のオペラ「シモン・ボッカネグラ」の
あらすじ、ストーリー、登場人物、アリア等を
ざっくり&じっくり解説していこうと思います。

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目次

ヴェルディ作曲、オペラ「シモン・ボッカネグラ」の基礎知識

【原題】

Simon Boccanegra

【作曲者】

ジュゼッペ・ヴェルディ

【台本】

フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
アリゴ・ボイト(1881年版の改訂)

【初演】

1857年3月12日 イタリア ヴェネツィア フェニーチェ劇場

【上演時間】

約2時間10分

【登場人物】

シモン・ボッカネグラ(Br) ジェノヴァの総督。かつては海賊だった。
ヤコボ・フィエスコ(Bs) かつては貴族だったが、身分を隠してアンドレア・グリマルディと名乗っている。
パオロ・アルビーニ(Bs) ジェノヴァの職人だったが、シモンを総督にした後、自分も家臣となって総督のために働いている。
アメーリア / マリア・ボッカネグラ(S)シモンの娘。アメーリア・グリマルディという名前で育った。
ガブリエーレ・アドルノ(T) アメーリアの恋人。良い家柄で育った青年。

【設定】

11世紀中頃のイタリア、ジェノヴァ

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ざっくり版 あらすじ、ストーリー

貴族と平民が対立していた 11世紀のジェノヴァ。
貴族派であるフィエスコの娘マリアと恋仲であったシモンはパオロに推され総督になることを決意。
総督になれば対立している貴族派のフィエスコにマリアとの中を許してもらえると考えていたからだ。

だがフィエスコはシモンとマリアの間に子供が生まれたことを認めない。
シモンを許す代わりに子供を渡すようにフィエスコは言うが、子供の行方は分からなくなっていた。

解決できないまま、マリアが病気で死んだことを知るシモン。
そこへ総督に選ばれた知らせを受け、悲しみを抱えたままシモンは総督になる。

25年後、 かつて貴族だったフィエスコは身分を隠し、アンドレア・グリマルディとして生活している。
シモンの娘であるマリアは、アメーリアと言う名前で孤児としてグリマルディ家で育っていた。
グリマルディ家では、マリアが恋人のガブリエーレと結婚の約束を交わしている。

グリマルディ家を救うために パオロとアメーリアを結婚させようと考えていたシモン。
だがアメーリアに会って自分と恋人だったマリアの娘だと分かり、 感動の再会を果たす。
アメーリアに恋人がいることを知り、シモンはパオロとの結婚をやめさせる。
アメーリアとの結婚を望んでいたパオロは、諦められずにアメーリアを誘拐する計画を立てる。

ジェノヴァの議会にガブリエーレとアンドレアがやってきて、アメーリアの誘拐犯だと思い込んでいるシモンを襲おうとする。
だが、無事だったアメーリアに止められ、事なきを得る。
真犯人に対して呪いをかけろとシモンはパオロに命じ、自分に対して呪いをかけることになったパオロはシモンを憎む。

パオロはシモンが飲む水に毒を仕込み、さらに暴動犯として捉えられていたガブリエーレ達を牢から出し、シモンとアメーリアが恋仲だと嘘をつく。
その頃、アメーリアはシモンにガブリエーレとの仲を告白。
敵と結婚したがっている娘について思い悩み、シモンは水差しの水を飲む。

ガブリエーレはシモンに再び襲いかかろうとするが、アメーリアが止め、シモンは全てを話してガブリエーレの誤解を解く。

パオロはシモン暗殺の罪などで死罪となる。
アンドレアと名乗っていたフィエスコは、シモンに自分はフィエスコだと告げる。
「孫娘を渡せ」となおも食い下がるフィエスコに、シモンは「あなたが孤児として育てたアメーリアがあなたの孫娘です」と伝え、二人は和解する。

全て上手く行くと思われたが、シモンの身体に毒がまわりはじめ、シモンは「次の総督にはガブリエーレを」と言い残し、息絶える。

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じっくり版 あらすじ、ストーリー

※あらすじ内に出てくる数字をクリックすると、その場面で歌われるアリアのタイトルに飛びます。

【プロローグ】

11世紀中頃のジェノヴァでは貴族と平民が対立していた。
ジェノバ総督選挙が行われる前夜、平民のパオロは「自分も権力を持ち、もう貴族に自分を見下させない」と心に誓い、シモンを総督にして自分も権力を握ろうと計画していた。

そこにシモンたち平民派が集まってきた。
シモンは権力に興味はないが、パオロに「総督になればマリアとの仲を許してもらえるかも」と言われ、総督選に出る事を決めたのだ。
マリアとシモンは恋仲で、二人の間に子供も生まれたが、マリアの父である貴族派のフィエスコがそれを知って怒り狂い、マリアを部屋に閉じ込めているのだ。

集まった平民たちにパオロはマリアの話をし、貴族たちに勝つためにシモンを総督にしようと呼びかける(※1)。
皆はシモンに投票することを決めて解散する。

その頃、マリアは病気で息を引き取り、フィエスコは悲しみに暮れ、シモンを憎む(※2)。
そこに何も知らないシモンが現れ、フィエスコに許しを請うが、フィエスコは「マリアの産んだ子を渡すなら考えよう」と言い出す。

シモンが「娘を預けていた老婆が亡くなり、娘は行方不明になった」と答えると、「これ以上話すことはない」とフィエスコは立ち去ったふりをする(※3)。

シモンはフィエスコの邸宅に入り込んでマリアに会おうとするが、マリアの亡骸を見つけ、驚きのあまり邸宅から飛び出してくる。

その様子を見ていたフィエスコが「天罰が下った」とつぶやく(※4)。

絶望と悲しみに暮れるシモン。
どこからか「シモンが総督に選ばれた」と喜ぶ人々の声が聞こえてくる。

【第一幕】

グリマルディ家の邸宅。

そろそろ夜明けという頃、アメーリアは恋人が来るのを待っている(※5)。
アメーリアは孤児としてグリマルディ家に引き取られ、育てられてきた。

恋人であるガブリエーレの声が近づいてくる(※6)。

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やってきたガブリエーレに「私の養父とともにボッカネグラ総督(シモン)を倒す計画をしていと聞いた」と彼を心配する言葉をかけるアメーリア。

ガブリエーレは「それは噂に過ぎない。心配いらない」と答える(※7)。

そこへ総督がやってくる知らせを受け、縁談話だと思ったアメーリアは、ガブリエーレに「養父を連れてきてください」と頼む。
ガブリエーレはアンドレアを見つけ、アメーリアとの結婚の許しが欲しいと言う。
アンドレーアは結婚を許すが、「アメーリアは総督に財産をとられないように、亡くなったグリマルディの娘のかわりに引き取ったのだ」とアメーリアの過去について語る。

実は、アンドレア・グリマルディはかつて貴族だったフィエスコで、シモンが総督になって力を失ったために名前を変えて生きていたのだ。
そして、アメーリアはシモンとマリアの間に生まれた娘なのだが、誰もその事に気づいていなかったのだ。

政治的に立場が悪くなっているグリマルディ家を救おうと考えているシモンは、邸宅にやってきて、そのための書類をアメーリアに渡す。

そして、パオロがアメーリアと結婚したがっていたため、アメーリアに恋人がいるかどうかたずねる。
アメーリアは恋人がいることや、財産目当てに言い寄ってくる男がいること、自分が孤児であり、母の肖像画だけを持っていることなどを語る。
シモンが持っていたマリアの肖像画を見せると、同じものだったと判明。

アメーリアはマリアとシモンの娘だったことが分かり、感動の再開を果たし、二人で喜び合う(※8)。

アメーリアが去った後、パオロはシモンにアメーリアとの結婚はできそうかと聞くと、シモンは「アメーリアとの結婚は諦めろ」と告げる。
「俺のおかげで総督になれたくせに」と怒ったパオロは、アメーリアを誘拐しようと企てる。

後日、議会が行われている最中に貴族たちの暴動が起こっているという知らせを受け、首謀者であるガブリエーレとアンドレーアが連れてこられる。
「アメーリアを誘拐した男を殺したが、男は死ぬ前に権力者に誘拐するよう頼まれたと自白した」と言い、シモンに飛びかかろうとする。
そこへ誘拐犯から逃れてきたアメーリアが入ってきてガブリエーレを止め、真の犯人はこの場にいると告げる。

シモンは「同じ国のものが無駄に殺しあうのはもう止めるべきだ」と皆をさとす(※9)。
パオロが黒幕だと察したシモンは、パオロに「真犯人を呪うべきだ。お前も同じように呪いの言葉を」と命令し、パオロは恐れおののきながら自分自身を呪う言葉を口にする。

【第二幕】

パオロは部下に、アンドレアとガブリエーレを牢から出すように命じる。

自分で自分を呪ったことに怯えながらも、シモンに復讐するため、水差しの水に効き目がゆっくりと出る毒を仕込む(※10)。
連れてこられたアンドレア(フィエスコ)にパオロはシモン暗殺を持ちかけるが、フィエスコはそれを拒否したため、再び牢獄に入れられる。

ガブリエーレには「総督はアメーリアを手に入れようとしている」と嘘を吹き込み、ガブリエーレはそれを信じて怒りに燃える(※11)。

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その場にアメーリアがやって来たため、総督との関係についてたずねるガブリエーレ。
シモンと父娘であることをまだ言えないアメーリアは「総督との私の間には清い愛情がある」と答える。
その答えを聞き、嫉妬心を燃やす。

そこへシモンがやってきたため、アメーリアはガブリエーレをベランダに隠す。
シモンはアメーリアの恋人についてたずね、アメーリアはガブリエーレを愛していると告白する。

シモンは娘が敵であるガブリエーレと愛し合っていることを嘆き悲しむ(※12)。
「ガブリエーレが罪をつぐなうなら許そう」とシモンは言い、アメーリアを部屋から出す。
シモンは悩みを引きずりながら水差しの水を飲み、そのまま眠りに落ちる。

ガブリエーレが出てきて迷いながらもシモンを殺そうとするが、アメーリアが入ってきて止める。

シモンが目を覚まし、アメーリアが娘だということを打ち明ける(※13)。
ガブリエーレは驚き、これまで自分がしてきたことを悔いる。

そこへ、反総督派が暴動を起こしているという知らせが入ってきて、ガブリエーレは総督派として騒ぎを鎮めると申し出る。
シモンは「暴動をおさめたら娘との結婚を許そう」とガブリエーレを行かせる。

【第三幕】

総督派が勝利し、暴動の主犯格だったパオロはとらえられ、暴動に関与していなかったアンドレア(フィエスコ)は釈放される。
二人がすれ違う時にパオロが「すでにシモンに毒を盛った」と告白したため、アンドレア(フィエスコ)はパオロを責める。
そこにガブリエーレとアメーリアの結婚を祝う声が聞こえ、パオロが「俺が誘拐したのに」と口走ったため、アンドレア(フィエスコ)は誘拐の真犯人がパオロだと気づく。

だんだんと毒がまわってきたシモンは苦しみ、風にあたるために部屋から出てくる。
そこへ「お前は毒を盛られた」とアンドレアが現れる。
シモンはその声を聴き、アンドレアがフィエスコだと気づく。
「復讐のために亡霊となって現れた」と語るフィエスコに、「あなたが育てたアメーリア・グリマルディこそ、あなたの娘が産んだ孫娘だ」と真実を告げる。

真実を知って涙するフィエスコとシモンは和解する(※14)。

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シモンが毒を盛られたことを本人に告げ、マリア(アメーリア)がやってくる気配を感じたフィエスコは「マリアにはその事を言うな。まず結婚を祝福したい」とシモンをいさめる。
マリア(アメーリア)がガブリエーレたちとやって来て、敵同士だった二人が一緒にいることに驚く。
シモンはマリア(アメーリア)にフィエスコが彼女の祖父であることを告白し、二人は真実を知って喜ぶ。

そしてシモンは自分がもうすぐ死ぬことをマリア(アメーリア)に告げる。

若い二人の結婚を祝福し、「次の総督はガブリエーレに」とフィエスコにあとを頼んでシモンは息をひきとる(※15)。

フィエスコは皆に「ガブリエーレが新しい総督だ」と告げ、シモンが死んだことを伝える。
人々はシモンを想い、彼の死を悼む鐘が鳴り響くのだった。

オペラ「シモン・ボッカネグラ」のアリア&聴きどころ

※数字部分をクリックするとあらすじ内のアリアが歌われる場面に飛びます。

※1 パオロのアリア
L’atra magion vedete  あの薄暗い屋敷を見ろ

※2 フィエスコのアリア
Il lacerato spirito  悲しみに引き裂かれた父の心は

※3 シモンとフィエスコの二重唱
Suona ogni labbro il mio nome  皆が私の名前を口にしている

※4 シモンとフィエスコの二重唱
Oh, de’ Fieschi implacata フィエスコ一族を許せるものか

※5 アメーリアのアリア
Come in quest’ora bruna  この薄暗い時間に

※6 ガブリエーレとアメーリアの二重唱
Cielo di stelle orbato   星が消えた空

※7 ガブリエーレとアメーリアの二重唱
Vieni a mirar la cerula  青い海を見に来てください

※8 シモンとマリアの二重唱
Figlia! a tal nome palpito  娘よ、その名前に心ときめく

※9 シモンのアリア
Fratricidi! Plebe! Patrici!  平民よ、貴族よ

※10 パオロのアリア
Qui tu stillo una lenta  お前にゆっくりと断末魔の苦しみを

※11 ガブリエーレのアリア
Sento avvampar nell’anima  心は怒りに燃える

※12 シモンとマリア(アメーリア)の二重唱
Figlia?  娘よ?

※13 シモン、マリア(アメーリア)、ガブリエーレの三重唱
Tu dormi, o veglio!  眠っているのか、老人よ

※14 フィエスコとシモンの二重唱
Io piango  私は泣いている

※15 シモン、フィエスコ、ガブリエーレ、マリア(アメーリア)の四重唱
Gran Dio, li benedici  天よ、祝福を与えたまえ

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オペラ「シモン・ボッカネグラ」についての私的解説

オペラのストーリー、あらすじをまとめるにあたって過去最高に時間がかかったのがこの「シモン・ボッカネグラ」。
あらすじの中で長い年月が流れ、名前が変わった人物もいてストーリーが複雑なため、少し解説を読んだだけではあらすじが理解できない人も多いことでしょう。

多くのオペラのストーリーは中世の時代が背景になっているものが多いため、政治的な話や争いについての話が頻繁に出てきます。

もちろん、中世の政治的背景を知っていればより突っ込んで楽しむこともできますが、芸術的観点からオペラを楽しみたい方や、オペラ初心者の方は政治について知らなくても充分楽しめます。

政治的な話が関わってくるオペラの場合、主要人物のうちの何人かが「○○派」「○○党」などに分かれて対立していることがほとんどです。
その党や派閥がどんな集まりかを知らなくてもいいので、誰と誰が違う派閥にいて対立しているのか、という事だけを押さえておけばあらすじの流れは読めるはずです。

このシモン・ボッカネグラではシモンとパオロが平民派、ガブリエーレとフィエスコ(後のアンドレア)が貴族派として描かれているのでそれを頭に入れておけばとりあえず問題ありません。
(ガブリエーレは後半でシモンに忠誠を誓ってシモン派になっているけど)

シモン・ボッカネグラのあらすじ、ストーリーを把握するために知っておくべきポイントが2つあります。

1つ目は、パオロは最初から最後まで悪い役として描かれているということ。
最初はシモンの部下として問題ない人物のように見えていますが、パオロがシモンを総督にしたのは、自分もそれに乗っかって権力を手に入れたかったから。
シモンはそのための道具でしかないので、中盤以降では逆恨みして悪だくみをする場面も多いのです。

2つ目は、名前が変わっている人物を把握すること。
まず、ヤコボ・フィエスコが25年たった後にはアンドレア・グリマルディと名乗っています。
これは、シモンが総督になったことでフィエスコが追放され、シモンに復讐しようと名前を変えていたため。

そして、そのアンドレア・グリマルディに引き取られた孤児が、本来のマリア・ボッカネグラから名前を変えてアメーリア・グリマルディと名乗っています。
つまり25年後には、ヤコボ・フィエスコ→アンドレア・グリマルディ、マリア・ボッカネグラ→アメーリア・グリマルディ、となっているのです。

この2点さえおさえておけばシモン・ボッカネグラの鑑賞は問題ないはず。

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あらすじやストーリーの難解さからシモン・ボッカネグラはあまり人気のあるオペラとは言えませんが、主要人物がバリトンとバスで固められているという非常に珍しいオペラ。
男性の低い声をたっぷり堪能できます。

そして、ヴェルディらしい重厚かつドラマチックな音楽がバスやバリトンの声の良さを余すところなく引き出し、見ごたえのあるストーリーとあいまっていやが上にも盛り上がります。

私個人はバリトンの声が大好きなので、垂涎の作品です^^

あらすじを把握して通して聴くと、ヴェルディのすごさ、歌い手の素晴らしさを感じられるはずですよ。

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以上、
「オペラ「シモン・ボッカネグラ」のあらすじ、ストーリー、登場人物、アリア等を解説。【ヴェルディ作曲】」
でした。

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